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—– 活用早見表 (埋め込みPDF)
—– 活用練習帳 (埋め込みPDF)
+ ラテン語動詞の完了幹形成法
—– I. s-完了幹
+ ラテン詩の規則
+ フランス語動詞の活用の覚え方
—– 1. Groupe A
—– 2. Groupe B
nix の属格は niv-is である。これは非常に特殊な語幹変化である。というより、このような語幹の変化を見せる名詞はおそらく nix の他にない。単数主格において -x となる名詞の語幹末子音は、そのほとんどが喉音(g-)か口蓋音(c-)であり、しかもそのうちの大半は口蓋音(c-)であり、喉音(g-)もそれほど多くは見られない。(e.g. index, indic-is; rex, reg-is)
さて、nix に戻ると、これは(c-)でも(g-)でもなく(v-)をその語幹末にもつ。そこで、「何故だ」となる。この問題は語源学に属するものであるが、それほど込み入った詮索をしなくてもこの問題は解決できそうである。 -x- ということで他に思い浮かぶのは、動詞の完了幹における幹末子音である。ここにおいても c- あるいは g- が大半を占めるのであるが (e.g. iungo, iunx-i; specio, spex-i)、ここでは名詞の場合と少し事情が違ってくる。
veho や traho はそれぞれ、vex-i, trax-i であるし(h-)、unguo, stinguo は unx-i, stinx-i (gu-)、coquo も cox-i である (qu-)。そこで、現在幹にv-音を持ち、なおかつ完了幹において -x の形態をとる動詞はないかと尋ねてみると、ちょうど vivo, vix-i (v-) が見いだされる。また、coniveo という動詞もその一つである。これらの語幹には、w 音が共通して見出される。(cf. Leumann“Lateinische Laut- und Formenlehre”, §169)
このように、動詞において v 音と x 音との間には繋がりをいくらか見出すことができるのだが、名詞においてこの連繋を見せるものは nix 以外にはなさそうである。
> 補足
先に nix (G. nivis) の変化について書きました。そして、v と x との関連を動詞の完了幹から証しました。そして、この関係を見せる動詞として vivo, coniveo をとり上げたのですが、ここにさらに figo を加える事ができるのを知ったので、補足として報告します。
__
figo の完了形は fixi であるが、その現在幹の語幹末子音は g である。しかし、figo は、元の形は fivo であったらしい。であれば、これら v-x の仲間に figo を入れて差し支えない。figo という形はその完了形から類推されたもので (x > g)、それがそのまま定着し、元の形は忘れられてしまったものらしい。
これらにおける v - x の関連は、比較言語学によっても確証されている。すなわち、この v は印欧祖語の *gu (特殊文字表記不可)に由来するとされる。それが、なぜかラテン語では完了幹、完了分詞幹において現れる。
いや、見方を変えれば、現在幹が特殊なのである。名詞でも、第三変化名詞の単数主格形は、いわば特殊形である。だが逆に、 s を背後に見ると過去の記憶が甦るのだとも言える。-s は完了幹を作り、また名詞の主格形も作る。nix はそこにおいて本来の自分の姿を思い出すのである。ラテン語の立場からみると、主格形、完了形、完了分詞形が特殊なのであるが、遠い祖先の目でみるなら、それが逆に映る。
(参照)
Leumann (Lateinische Laut- und Formenlehre, §157)
さて、nix に戻ると、これは(c-)でも(g-)でもなく(v-)をその語幹末にもつ。そこで、「何故だ」となる。この問題は語源学に属するものであるが、それほど込み入った詮索をしなくてもこの問題は解決できそうである。 -x- ということで他に思い浮かぶのは、動詞の完了幹における幹末子音である。ここにおいても c- あるいは g- が大半を占めるのであるが (e.g. iungo, iunx-i; specio, spex-i)、ここでは名詞の場合と少し事情が違ってくる。
veho や traho はそれぞれ、vex-i, trax-i であるし(h-)、unguo, stinguo は unx-i, stinx-i (gu-)、coquo も cox-i である (qu-)。そこで、現在幹にv-音を持ち、なおかつ完了幹において -x の形態をとる動詞はないかと尋ねてみると、ちょうど vivo, vix-i (v-) が見いだされる。また、coniveo という動詞もその一つである。これらの語幹には、w 音が共通して見出される。(cf. Leumann“Lateinische Laut- und Formenlehre”, §169)
このように、動詞において v 音と x 音との間には繋がりをいくらか見出すことができるのだが、名詞においてこの連繋を見せるものは nix 以外にはなさそうである。
> 補足
先に nix (G. nivis) の変化について書きました。そして、v と x との関連を動詞の完了幹から証しました。そして、この関係を見せる動詞として vivo, coniveo をとり上げたのですが、ここにさらに figo を加える事ができるのを知ったので、補足として報告します。
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figo の完了形は fixi であるが、その現在幹の語幹末子音は g である。しかし、figo は、元の形は fivo であったらしい。であれば、これら v-x の仲間に figo を入れて差し支えない。figo という形はその完了形から類推されたもので (x > g)、それがそのまま定着し、元の形は忘れられてしまったものらしい。
これらにおける v - x の関連は、比較言語学によっても確証されている。すなわち、この v は印欧祖語の *gu (特殊文字表記不可)に由来するとされる。それが、なぜかラテン語では完了幹、完了分詞幹において現れる。
いや、見方を変えれば、現在幹が特殊なのである。名詞でも、第三変化名詞の単数主格形は、いわば特殊形である。だが逆に、 s を背後に見ると過去の記憶が甦るのだとも言える。-s は完了幹を作り、また名詞の主格形も作る。nix はそこにおいて本来の自分の姿を思い出すのである。ラテン語の立場からみると、主格形、完了形、完了分詞形が特殊なのであるが、遠い祖先の目でみるなら、それが逆に映る。
(参照)
Leumann (Lateinische Laut- und Formenlehre, §157)